12.それだけ


静かに雪が降ってきて
少しずつ君を冷やしていく
ひとりで歩く横顔を
なんとなく想像してみたよ


肩に力が入って
早足で進んでいく君の
冷えた優しい手のひらを
ぼくが温めてもいいですか


寒いからと袋を開けたのは君で
震えながらぼくを求めたのは君で
限られた時間でも君のために
生きたいと願ったのがぼくなんだ


ぼくは使い捨てのカイロだから
明日捨てられてしまうのですか?
だけどそれでもいいかな なんてね
心のどこかで思ってたんだ


持ってる力は少しだし
そんなのもう分かってるけどさ
今だけはそばに居させてよ
ぼくにはこれしかできないから

 


いつの間にか雪は肩に積もり
冷えきった君は泣いている?
ひとりで歩く帰り道
大丈夫かな心配してるよ


積もった雪をはらって
それから立ち止まった君の
冷えた優しい心まで
ぼくが温めてもいいですか


好きだよと笑ってくれたのは君で
傷付きながらぼくを求めたのは君で
限られた時間でも君のために
生きたいと思ったのがぼくなんだ


ぼくは使い捨てのカイロのように
明日捨てられてしまうのですか?
だけどそれでもいいかな なんてね
心のどこかで思ってたんだ


サヨナラがいつか来るかも
そんなのもう分かっているけどさ
今だけは側にいさせてよ
ぼくにはこれしかできないから


ぼくは使い捨て それでもいいよ
君がひとりきり苦しいとき
温めることができていたなら
それだけで十分だから



君の肩にある雪を全部 溶かすことは
きっとむずかしいけれど
今だけは側にいさせてね
ぼくにはこれしかできないから



いつかホッとひと息ついて
悲しいことも溶けちゃうような
温かい部屋をひとつ見つけて
笑っていてくれますように。


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珠里七日和